【14】ガソリンスタンドと金物店

8/8
前へ
/212ページ
次へ
まっさらになった二つの土地。 最初からそこには何もなかったよう。 初めてこの道を通る人はここになにがあったかなんて知らない。 そして、その先もずっとずっと知ることはない。 人の思いや記憶や願いだけをその場所に残して、景色だけは時代とともに移り変わってゆく。 更地になったこの場所には いつの日か、新しい何かが代わりに建って、そして新しい人の記憶や思い出がまた作られていくのだろう。 昔からそうやって 何かが終われば、何かが始まり、それを繰り返してきて今があるのも事実。 あのご主人がどんな思いで、この土地と店と家を手放したかなんて 他人の自分が計り知ることはできないが、 結局は時代を作るのも人間だが、壊していくのもまた人間であるということを思い知らされたような気がする。 ひとつの土地でも 時代を振り返れば そこに込められた思いがある。 なにげに目に映る景色は 今日も誰かの 遠い遠い記憶。 いつの時代もそんな想いで 溢れているのだろう。 fin
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加