【17】タクシー運転手

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   「どうも、こんばんは。」  タクシーに乗り込んだ私に、愛想のいい声が響いた。    「…こんばんは」  肩越しに振り返り夜の挨拶をしたタクシー運転手は、中年よりもう少し歳のいった六十代後半くらいに見えた。  「どちらまで?」  「あぁ…×××××までお願いします…」  「×××××ですね」  静かに動き出したタクシー。  自宅にたどり着く保証を得た私は、安堵してシートにゆっくり体を預けた。ホッとしたのも束の間、またしても瞼が重くなる…。 「今日は飲み会かなにかで?」 それを遮るかたちで話しかけられた。 「えぇ…まあ。」 「そうですか。それは楽しかったでしょう。お友達とですか?」 「…友達というか…ママ友との飲み会だったんです」    「ママ友ですかぁ、それはいいですね。そういうのは大事ですよ。たまには家を出てたくさんお喋りして楽しまないと。」 「…ははっ、そうですね。」  まさか、タクシー運転手に理解を示す言葉を掛けられると思わなかったな…。  まあ、でもそこは客商売。  もうとっくに日付は変わって今は深夜の2時を回っている。こんな時間までかって内心では思ってるに違いない。
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