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「どうも、こんばんは。」
タクシーに乗り込んだ私に、愛想のいい声が響いた。
「…こんばんは」
肩越しに振り返り夜の挨拶をしたタクシー運転手は、中年よりもう少し歳のいった六十代後半くらいに見えた。
「どちらまで?」
「あぁ…×××××までお願いします…」
「×××××ですね」
静かに動き出したタクシー。
自宅にたどり着く保証を得た私は、安堵してシートにゆっくり体を預けた。ホッとしたのも束の間、またしても瞼が重くなる…。
「今日は飲み会かなにかで?」
それを遮るかたちで話しかけられた。
「えぇ…まあ。」
「そうですか。それは楽しかったでしょう。お友達とですか?」
「…友達というか…ママ友との飲み会だったんです」
「ママ友ですかぁ、それはいいですね。そういうのは大事ですよ。たまには家を出てたくさんお喋りして楽しまないと。」
「…ははっ、そうですね。」
まさか、タクシー運転手に理解を示す言葉を掛けられると思わなかったな…。
まあ、でもそこは客商売。
もうとっくに日付は変わって今は深夜の2時を回っている。こんな時間までかって内心では思ってるに違いない。
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