【18】やのけん?!

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    「…あぁ、地図…ですか。とりあえずここだと他の車の邪魔になるので、もっかい駐車場に戻りません?」  「…そうですね」  はぁー……なんかめんどくさくなってきた。つか、なんで今少し今言葉を濁した?早く家に帰りたい。もう疲れたよ、ほんと。  もう一度、駐車場に車を停めなおす。    バッグからノートとペンを取りだして地図を書こうとしていると、またしてもコンコン…と。  窓をあけて男性のほうを見ると、彼は泣きそうな顔でこう言った。  「…すみません、やっぱり地図見ても分からないと思うんです。暗いんでほんとどこ通ってるか全然分かんなかったし…それでなんですが、熊本インターはここから近いですかね?」  はあ?…熊本インター  「…まあ近いと言えば近いですが。」  「今通ってきた道はちょっと難しいので当日はやっぱり高速を使って来ようかと…それで熊本インターまでの道を教えてもらえませんかね…ほんとすみませんっ。」  「そう、ですか。まあそのほうがいいかもしれないですね。」  もうなに、それ。  てゆうかいつになったら帰れるの…  若干イライラする…  連休明けてからずっと残業だったんだよこっちは。千枚近くの図面をCADを使わずに頭の中だけで展開させて既にグロッキーだっていうのに、この状況を展開させるまでの柔軟な思考はもう残っていないんだよ…    いい加減疲れたし家にも帰りたいし子どもにも会いたい。このやりとりはいったいいつまで続くの。どこで終わるの?!  泣きたくなる気持ちを抑えて、なんとか平静を装い男性をみる。  「えーっと、熊本インターまでの道教えますね。この先に、大きなショッピングセンターがあるんですよ。それ過ぎたらバイパスに出るんで市内方面に真っ直ぐ進んでください。数キロ道なりに進めばインター見えてくるんで。」  かなり雑に説明をした。  すでに丁寧に教える元気は、ない。  しかし、このあとの彼の発言に私は持っていたペンを落としてしまうほど全身が硬直してしまった。  
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