【18】やのけん?!

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   そうこう言ったところで。  結局は、蒔かれた種を一粒も返すことなくすべて受け取ってしまう自分もまた馬鹿である。       『NOと言えない』  日頃から習慣化してしまった私のこの行動も彼となんら変わらないのだろう。  今までも似たようなことでずいぶんと損をしてきた。外部要素を不必要なまでに取り込んで生きる私は寧ろ彼より馬鹿かもしれない。    しかし他者との付き合いは、こうして自分の姿を知るきっかけにもなる。  今回のケースは稀であるが、他者とのコミュニケーションは深くなれば自分では気づきにくい盲点領域を見つけだすことができる。  私も変わらなければいけないのだろう。  彼と同じように─    シートから体を離して車を発車させた。家に帰り着いたときには時刻は22時を回っていた。  とりあえずまだ起きていた子どもを寝かせ、夜中に風呂に入って翌日の準備をしていたらあっという間に朝がきた。  やのけんめ…  ほとんど寝れなかったじゃないか。    その日の仕事を終え、夕方の六時頃だった。  彼から一通のメールが届いた。 ───────────────  『昨晩はホントに   ありがとうございました(*^^*)   おかげサマで無事   KK公園行けそぉデス!』   ☆イノさん★   優しい方なんですネッ♪   なんかマイナスイオン   いっぱいでしたよぉ☆』 ───────────────     「……………」    私は、緑豊かな大自然にある滝でもなければイオンを放出するプラズマクラスターでもない。  あの状況で爽やかオーラを出したつもりはいっさいなかったが…    このメールから五日が経つ。  私はいまだにコレに返信ができていない。 fin
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