【19】追われる男

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   グループ会社特有の親会社への依存。  売上げの半分以上を親会社から案件を引き継いで業績を積んできた我が社。  しかし、リーマンショック以降大きな改革が急務となった。     親会社との表裏一体の事業運営は今の時代、大変危険である。  回避すべくは、  『共倒れ』     市場環境の悪化で予定されていた設備投資を見送る企業やメーカーが続出し、海外からの大型案件も白紙になるケースが増えだした。  当然の事ながら、売の6割近くを親会社に依存しているのだからこのような状況になれば我が社も直接的影響を受けるのは避けられない。  最終的な経営権は親会社にあるにしても、独自でオリジナリティーのある商品を開発し新規顧客を獲得していかなければ連鎖的に倒産に追い込まれることだって起こりえない話ではないのだ。  そこで一番改革を迫られたのが『営業部』であった。  悠長にデスクに足を伸ばしていても、知らず知らずと上から案件が流れ込んでくる。  死に物狂いで仕事を取りに行く営業マンなどひとりもいないのだ。  すぐにでも、厳しい営業経験を積んだ実力のある人材を採用したいというのが会社側としてあったのだろう。  誰が引っ張ってきたのかは知らないがそのような状況で雇われた男なのだから、みんなが特別な目で見るのも無理はない。  
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