【19】追われる男

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   それから一週間余りして事件は起こった。  その日は出勤して早々、事務所の様子がおかしかった。  会議室と事務所をたくさんの管理職メンバーが慌ただしく出入りしている。  朝から重要な会議でもあるのかな…。  半開きになった会議室のドアの隙間からヒソヒソと話し声が聞こえる。  ひとりの管理職は神妙な面持ちで携帯片手にどこかに電話をかけながら部屋を出ていった。    「なにかあったんですか?」  先に出勤していた先輩に、PCの電源を立ち上げながら尋ねる。  すると先輩は口元に手を充てそっと顔を近づけると─ 「足立さんが消えたんだって」  は?……消えた?! 「明朝に、浜崎課長のところに足立さんから電話があったらしいんだけど。一言だけ言って電話切ったらしいよ」 「なんて?」 『すみません、逃げます』    
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