【19】追われる男

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   一向に信じる様子のない相手に、このまま黙って切ってしまおうかと考えあぐねていると、突然相手先のほうから電話を切られた。  『ガチャガチャン!』  受話器から音が消えたのと、事務所のドアノブから激しい音がしたのは、ほぼ同時だったように思う。  嫌な予感しかしない─  まだ手に持ったままの受話器からツーツーと機械音だけが虚しく鳴り響く中、目の前に……。  「足立さんいますー?」    いかにも。  な、なりをした男性が三人。ガンを飛ばして入ってきた。    ああ……やっぱり…。  この事態には、さすがに部長が対応することになった。    「3対1はツラいよね」  先輩が同情の眼差しで取り立て屋と一緒に応接室に入って行く部長の背中を見つめていたが、『ざまー』と心の中で思った私はきっと性格が悪いのだろう。     「こういう時って、お茶出すのかな?」  「でも誰が?」  『…………』  お互い顔を見合わせて無言になったのは言うまでもない。    
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