【19】追われる男

23/24
前へ
/212ページ
次へ
   「ねね、先輩。コレあげますよ」  『……えっ?や…私もいらない』  「…………」  あんなにハイテンションだった先輩が急におとなしくなった。なんだかんだで先輩も私と同じ気持ちなんだろうと読み取った。    はちみつ金柑のど飴……  ほぼ毎日のように足立さんが買ってきたキャンディーだ。  彼を思い出すから嫌というよりも、誰のお金で買っていたか分からないキャンディーを毎日食べていたということ。そして何も知らずにその袋の応募券で当たってしまったこのクッション…。    これをどうやって気持ちよく使えばいいんだ。  先輩との電話を切って、しばし我が家へやってきたこのぬいぐるみ仕立ての可愛らしいクッションと睨めっこ。  「君に罪はないよなぁ…」  枕型をした金柑色のクッションの片側は、はちきんのオリジナルキャラクターの顔になっている。憎めないほどつぶらな瞳をしたクマさんの顔である。  そういや、ぶるぶるするんだよねコレ…。    裏側についていたスイッチをONにして頭を乗せてみた。  『ブーブーブーブーッ…………』    なんだこれ!…  あまりの微振動にこの機能をつけた意味が理解できず、思わずファスナーをあけて中の構造を調べてやろうという好奇心が沸いてしまった。
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加