【20】あご八

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   箸で掴んだソレを目の高さまで持ってくると、ゆっくりと揺らしてみた。    ふるふるふる…  薄い…薄すぎる。  スーパーの総菜コーナーに置いてあるものより遥かに薄いソレに頭をひねる。  なぜこれが売れるんだ…    一度それを元の場所に戻して全体的な検証を始める。  容器の三分の一を占めるご飯の量は多くもなく少なくもなくまあまあだ。真ん中には小粒のカリカリ梅干しが乗っている。    添えられた千切りのキャベツは太さにバラつきがあるものの、スライサーを使わずカットしてあることが頷けてここも特別問題には感じない。    いるのかいないのか分からないほどちょこんと隅っこに控えめにいらっしゃるお漬け物の高菜もまあよしとしよう。  問題はコイツだ。  メインであるにも関わらず、それはどこか儚げでドーンと構えるというより『とりあえずここにいます』  と言った感じなのである。  私が検証しているのは、この流れから大体察して頂けると思うがお弁当の話し。  今にも潰れそうな店構えの弁当屋。  『あご八』  の、とんかつ弁当だ。  
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