【20】あご八

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あっという間に完食してしまった。 予想以上にインパクトのあったタレのおかげで薄いカツのことなどどうでもよかった。 ゆっくりとぬるくなったお茶を喉に流し込みながらふっと顔が緩む。 タレマジックだな、こりゃ。 お腹も満たされ少し落ちついたところでもう一度冷静に考えてみる。 これでリピーターがつくのだろうか… 腹が減っていればなんでも旨いと思えるものだが、タレが旨いと言う理由だけでやっていけるものなのか。まだ妙に納得がいかない。 しつこい性格だと思われそうなので、ここで言っておきたい。 私はカツの薄さを気にしているわけでない。 あくまでも私が興味を示しているのは、あご八が『存続』できる理由であって、検証の結果、とんかつの厚さは煎餅並みであるという事実が発覚した。そこでさらに謎が深まるなか、それをカバーするタレに出会った。しかし、それだけでは私の持つ疑問を完全には払拭できない。 何故ならそれには二つの理由がある。 ひとつは『あご八』の立地条件だ。 駐車場は、店の目の前だけでとても狭い。駐車できるスペースは二台、無理して三台といったところだろうか。 車がわりと通るため頭から停めなければならないし、バックで道路に出るのはとても危なっかしい。
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