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大人になってから、何度あのひろうすを食べたいと思ったことだろう。
スーパーが出来てから豆腐屋の豆腐は売れなくなった。
気づいたときにはシャッターが降りたままになっていて、店を閉じたんだと必然的に知ることになった。
それから似たようなひろうすを別の店で見つけては、買って食べてみたけれど、当然同じ味には巡り会えなくて。
もう二度とあの味のひろうすは食べられないんだなと改めて実感したとき、どこか寂しさを感じながらも懐かしい思い出として蓋をした。
「はい、お待ちどおさま。じじいが頑張って揚げたからね」
その声ではっと我にかえる。
「ありがとうございます」
シミだらけのしわしわの手から弁当の入った袋を受けとる。
この店もあと何年此処にあるだろうか。
ここを慕う人や近所の人が来る限りはなんとかやってはいけるだろうが、ふたりともかなりの高齢だ。どちらか一人でも倒れれば店を続けていくのは難しいだろう。
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