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先生は腰を下ろすと、れおくんのリュックサックを肩からおろし、そっと彼の頬に手をあてた。
「まだ眠そうな顔してるねぇ、起きたばかりだったのかな」
ちょっと中身を確認するねと言いながら、リュックサックの中の荷物を確認し始めた。
「まぁ、ちゃーんと揃ってる。お着替えもタオルも全部入ってるね。」
「えらいねぇ、おねえちゃん。」
…びっくりした。
保育園の準備もお姉ちゃんがやってるんだ…。
先生が、最初に全部揃ってるって言ったとき、私は頭の中で、準備はいちおうお母さんがしてるんだな~なんて思っていたから。
だからその後に続いた言葉は、予想以上に私の心にズンとなにか暗いものを落とした。
先生は中身を確認し終わると、またゆっくりれおくんのほうへ向き直り、その小さな手を優しく両手でつかみ、そして優しく声をかけた。
「朝ご飯は食べたきた?」
れおくんは、やっぱり言葉は出さずにただ顔を横に振った。
「そっか、食べてないんだね。」
先生は、もう一人の早番で来ていた先生へ向かって、パンくらいあればいいのにねと言っていた。
その後、その場を離れたかと思うとまたすぐ戻ってきたのだが、その手には一枚の食パン。
給食室から持ってきたのだろう。
れおくんに、椅子に座って食べるよう促していた。
言われるがままに、椅子に座ると小さな口でパンを含んだ。
…あー、やば…
なんか苦しい…
…胸が痛い。
表現のしようがない感覚に襲われて、なんか心が闇の中に引きずり込まれていきそうになった。
そんなとき、2号の声で我に返った。
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