【11】虎太郎と謎のおじさん

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うしろから迫るバイクの音。 自分の真後ろにいるのか、少し離れているのかまったく分からない。 でも、絶対に振り向かなかった。 あとすこしだ! ようやく見えた、理容室の駐車場。 どのくらいスピードが出ているのか分からないけど、このままでは曲がれないと思い、直前で一気にブレーキをかけながらハンドルを右に回した。 駐車場に入ったが、勢いあまって自転車ごと派手に転倒。 「いったぁ…(/_<。)」 でもすぐに起きあがって、倒れた自転車をそのままにして美容室の中へと駆け込んだ。 ガチャン!! 勢いよく開けられた扉に美容室の店員さんは何事かというような顔で、目を丸くしてこっちを見た。 「ハァっハァっハァっ… すっ、すみせんが電話を貸してください!」 ガラス張りの窓から外を見ながら、店員さんにお願いした。 バイク男は、駐車場入り口に止まり、しばらくこちらの様子を伺っていたが、あきらめたのかそのまま去っていった。 た す か っ た ぁ (;´∀`)・・・ 「あのー、どうかしたんですか?」 不思議そうに店員さんが話しかけてきた。 まだ息の整わない私は、今の出来事を話せるほどの余裕はなくて。 「いやっ、ハァっハァ…なんでもないです…だ、大丈夫です、電話お借りしていいですか…」 お店の人に軽く頭を下げ、 家に電話をかけた。 おばぁちゃんがでた。  一度深く深呼吸をする。 「もしもしinoだけど。 ごめん、○○理容室まで迎えにきて。 変な人につけられてるような気がするから。」 「ええっ!だっ、大丈夫なの!?」 「大丈夫だよ。お店の中にいるから」    「分かった!すぐ来るから」 あえて、本当のことは言わなかった。 もし、バイク男に『まて、こらぁー』 と言われながら追いかけられた。 なんて言ったら、 おばぁちゃん、私を迎えに来る前に心臓発作でもおこしそうだもん(笑)   そんなことになったら、もっと困る。 頼れるのは、おばぁちゃんだけだから。 分けあって小学校6年の頃から、 おばぁちゃんに育ててもらっていて。 あんまり心配はかけたくなかった。  
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