【13】阿部くん

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がやがやと騒がしくなった会場で、ふと新入社員たちへ目をやると お決まりの光景。 先輩や上司に次々とお酒をつがれ、断れない彼らは、渋い顔をしながらも必死に酒を口にしていた。中には既に、顔を真っ赤にした社員もいた。 あちゃ~、かわいそうに…… まあ、頑張れ。 避けては通れぬ道。 軽い同情の眼差しは向けるものの、自分はまた目の前のお酒と料理を堪能。 先輩たちの合コン失敗談を聞かされながらもその場を楽しんだ。 宴会も中盤に差し掛かった頃。 どこからともなく用意された一台のカラオケ機具。 酔っぱらったオジ様たちが、 「新人~!!歌え~!!」 と野次を飛ばす。 既にグロッキーな表情をした新人二人がステージへと上がった。 だ…大丈夫か…? ステージのど真ん中で吐くのだけはやめてくれよ。 私の心配をよそに、曲が流れ出すとわりと元気に歌い出した二人。 正直、なんの歌かは分からなかったが一生懸命歌った彼らに周りからはパラパラとではあるが拍手が送られた。 その後も、無理矢理壇上に上げられた人物がいた。 どれどれ、次はどの新人だ? 再びステージに体を向けると、そこに立っていたのは阿部くんだった。
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