【13】阿部くん

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………阿部くん…(゚Д゚) 歌うのか? いやいや、彼は歌わんだろ。 でも新人が歌ったのだから、ひくにひけないかもしれない…。 でも歌うとしてもアニソンか? 私の中の阿部くん情報。 阿部 修次 機械現場担当。 好きなもの・・・ポケモン 好きな映画・・・ポケモン 趣味・・・パソコン(オタク) 雰囲気・・・声が小さい、物静か 外見・・・色白で黒縁眼鏡 オーラ・・・僕に近づかないで そんな彼が、この場で。人前で。 歌うのか? 私の興味は一気に彼へと移った。 もってこいの観察対象。 (コレマタ悪趣味) すると、そこで繰り広げられたのはあまりにも想像を超えた光景であった。 阿部くんは、ネクタイをおもむろに外すと、自分の額にねじ巻いた。 そして彼が選曲したのは………。 ゴールデンボンバーの 『女々しくて~』 曲がスタートしたのと同時に、彼は振り付けも交えて拳を突き上げノリノリで歌い出したではないか。 これ阿部くん…? にわかに信じられない。 開いた口が塞がらないのは、どうやら自分だけではなかったようだ。 周りの社員たちもこれまでいるのかいないのか分からないような存在だった彼が、今目の前で、ゴールデンボンバーの曲を派手な動きとともに歌っているという事実をただただ目の当たりにし、しっとり酒を呑んでいた者も、仕事を熱く語り合っていた者も、となりの女性にセクハラまがいのことをしていた者も、すっかり潰れて睡魔に襲われていた者も、 皆が彼に視線を注いだのだ。 周りの空気をよそに、当の本人は。 さらに自分を掻き立てるかのように声を張った。   彼のその姿に一瞬場の空気が止まったようにも思えたが、その後一斉に歓声があがり次々と他の者まで壇上へと上がりだした。
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