ディライト中で(いかにして震災を生き抜いたか)

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みんながその場所に留まるように勧めてくれましたが、先約があったものでしたから。」 私は3月を期に職業を変えるつもり前年の12月を持って退職しそれまで父親の介護し3月の中旬には上京する予定だった。 主人は疲れたような声で。「娘の嫁いだ家で新築する前に住んでいた古い家に移れと言われたんだ。」 「それが良かったのでは。」 奥様は答えた。 「それはありがたいけど,そんなことしたら,ここの仮説に住んでる人や亡くなった人、まだ見つからない人には大変申し訳ないよ。」 確かにこの仮説住宅には同じ地区の人達がこの夫婦の隣近所に昔から住んでいた人達だ。 「ところで息子さん達は。」 「よくここに来るよ、父さんとケンカして他のところに移り住み,みんな無事で これがケガの巧妙ともんだちゃや。」 「とりあえず皆さん無事だったんですね。」 ところが仮説住宅の住人はこの夫婦のように身内がみんな無事だったとは限らない人も多くいた。 奥さんの話は。 「隣の家では旦那が津波で流されて遺体は見つかったもの、火葬は県外の遠いところでしたらしいよ。」
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