魔法世界

10/11
前へ
/11ページ
次へ
確かあの日、俺は普通に塾に向かっていた。 だが公園からあの少女の声が聞こえたんだ。 公園の中を見てみると、少女が蟷螂みたいな化け物と戦っていた。 その姿はまるで孤独と戦う戦士に見えた。 しかし、少女はこちらに気付き、相手に隙を与えてしまった。 「!!」 少女はすぐに攻撃をかわすが、既に次の攻撃が来ていた。 ドクン… 足が動かない。助けたいのに足が動かない。 ドクン… このまま俺は見捨てるのか?あのコを。 ドクン… あの時のように。また…。 気付くと動かなかった足が動き、俺は少女の身代わりになっていた。 化け物の注意が俺に逸れ、その間に少女は化け物にトドメを刺した。 その後に俺の近くに来て言った。 「何で私を助けたの?」 普通にする質問だ。確かに知らない人が来たら言うだろう。 「女の子を…見捨てる男の子は…最低…だから…。」 息を荒くして応える。お腹が生暖かくなってきた。 「何で!?死んじゃうかもしれないのに!?何で!?」 「気付いたら走っていたから…?」 少女は面食らった顔をしていた。 馬鹿だ。こんな馬鹿は初めてだ。 馬鹿で優しかった。 「助かる方法が…一つだけあるよ。」 「何だい?」 「死にたくないなら…これを飲み込んで。」 「…飴玉…?」 「いいから!!早く!!」 言われるがままに飲む。 「じゃあね。また…今度…。」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加