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(でも怖くない。)
少女は心の中で頷くと瞬きを一つして、その一歩を踏み出した。
先が見えない階段をひたすらに登り続けるその姿は、何か使命的なものを背負っているかのように、ただひたすらであった。
(どれだけ上ったかな。)
そう考えた瞬間、自分の意識は階段を上っている時と全く違うような、不思議な感覚に陥った。上っている時には何も考えていなくて無意識の状態だった。まるで上ることが義務のように。
頭を傾げて後ろを振り向いたが驚いて前と後ろを見直してしまった。
「うそでしょう?どうして全然変わってないの?」
ちっとも前を進んでいなかった。五段目あたりからちっとも。
周りが真っ白で風景が変わらないからわからなかったけれど、どんなに目の前の段差を越えていった気がしても、それは所詮気のせいだったようだ。
そんなはずはないのに。それでも目の前の現実は残酷だ。やっとこの空間から出られると思っていたのに先へ進めない。
そのせいか随分進んだというのに脇腹も疲れていなかったし息も乱れていない。
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