1,白い記憶

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それからどれだけの時間が経っただろうか。泣き疲れて寝て気がついたら声がした。 「泣かないで」 突然声がして、少女は驚いて顔を上げて見ると、目の前には優しく微笑む青年がいた。 その彼は自分とは違い、白ではなく色が着いた普通の人だった。 (あ。私とは違う、色のついた人だ。なんだか悔しいなぁ。) 「どうしてここにいるの?」 なんだか腹が立ってきた。ここは真っ白で色のない私のような人がいるべき場所。あなたみたいに鮮やかな人間はここにいる必要なんて無いのに。自然とそう思った。 「うん。君を迎えに来たんだよ。一緒に帰ろう?」 はてしなく胡散臭い。だいたい私は他人を、とりわけ知らない人を信じない。どうしてこの青年は見ず知らずの人間にかまうのだろう。 「嫌だよ。私はずっとここでいい。」
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