★泣き虫お姫様

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雨上がりの湿った暖かい外気。 鼻をつくアスファルトの臭いが直に伝わってくる。 無機質な、生暖かい空気と臭い。 そんな外の様子を保健室のベッドで眺めながら、涙する一人の少女。 「ひっ……っ……うっ」 朝宮 澪(アサミヤ・ミオ) 涙腺が人の五倍は緩い中学三年生の女の子。 澪は、何かあるとすぐにこの保健室に駆け込んでくる、言わば保健室の常連だった。 そして今日も……。 シャア、と軽い音がして、保健室のベッドを仕切っていた薄いカーテンが勢いよく開く。 カーテンを開いた人物は、澪の姿を見つけると、はぁ……と深いため息をついた。 「朝宮ぁ……お前、今度はどうしたんだよ?」 「先生ぇー!……うぅ……」 藍田 冬歌(アイダ・フユカ)二十六歳。 この学校に勤務する、女性の保健室の先生だ。 「泣くな!」 「でもぉ……っ……」 少々男勝りだが、面倒見のいい先生である。 「……で?何があったの」 冬歌は腰に手をあて、ため息をつきながら言った。 澪は溢れ出る涙を拭い、冬歌を見つめた。 澪が今日、保健室に来た理由。 それは。
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