★泣き虫お姫様

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「コバミにフラれた……!……っ」 同級生の小林 大輔(コバヤシ・ダイスケ)通称コバミにフラれたからだ。 事実を口にした瞬間、澪の瞳からまた涙が溢れてきた。 そんな状況の澪の額を、冬歌はちょんっと人差し指で小突いた。 「あんた、また泣きながらコクったんでしょ?」 「だって……」 “私、いっつも緊張し過ぎて泣いちゃうんだもん” そう言い訳をしながら澪は下を向き、俯いてしまった。 「顔はお人形みたいに可愛いのにねー……可哀想に」 「冬ちゃん!それ、慰めてんの!?」 「バカにしてるの!」 そう言いながら、冬歌はケラケラと笑った。 この人は、本当に先生らしからぬ先生だと思う。 先生って言うのはこう、ついこの間赴任してきたばかりの新人教師、鈴葉 雨姫(スズハ・ウキ)先生みたいな、優しくて頼りになる人を指すのだろう。 雨姫先生の栗色の髪の毛が、澪の憧れだった。 それでも、こうして澪と対等に付き合ってくれる冬歌のような教師は少ない。 「冬ちゃんのバカ……」 「ははっ!……まぁ、あたし職員室に用事あるから、しばらくここにいればいいよ」 「うん……ありがとう」 冬歌は澪にニコリと笑い、保健室を後にした。 冬歌が出て行った後の保健室は、ガランと静まり返っていた。 放課後、保健室の扉を開く者は滅多にいない。 「……いいや、少し寝よう」 澪は涙を拭い、保健室のベッドに倒れ込んだ。
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