★泣き虫お姫様

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しかし少年は澪の腕を掴み、自らへ引き寄せる。 男の力に女の澪が敵うはずがなかった。 「嫌っ……!」 抵抗など、大した意味を成さない。 突然両手の自由を奪われた澪の瞳には、大粒の涙が溢れてくる。 そんな澪の姿を見て、少年は口角をニヤリとつり上げた。 「その顔……すっげぇクる」 見たことのない、男の視線が澪を捕らえる。 「嫌だったら……!」 「……無駄だよ」 「……っ……!」 いくら抵抗しても、やはり敵わない。 飾りの抵抗は、男を欲情させるには充分だった。 澪の瞳から、一筋の涙が零れ落ちる。 本格的に泣き出した澪を前に、少年は目を見開いた。 本当に泣かれるとは思っていなかったのか、少年の余裕に満ちていた表情が一瞬崩れた。 「泣くなよ……まぁ、いいや。今日は名前覚えてもらえれば」 少年はそう言って、澪の両手を解放した。
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