★泣き虫お姫様

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澪は放心状態のまま、涙を流していた。 「っ……」 「俺は桜 稚尋(サクラ・チヒロ)覚えて。……姫」 稚尋はそう言って澪の頭を撫でると、保健室を出ていった。 後に残された、放心状態の澪。 「なによ……あいつ」 初対面で、いきなり好きでもない男に泣き顔を見られるなんて、本当に最悪だ。 桜 稚尋。 最低な男だ。今まで見てきた男の中でもダントツで最低な男。 初めて彼を見た瞬間、正直驚いた。 綺麗な栗色の瞳。 艶やかな薄めの唇。 表情を隠すかのように垂れる栗色の髪。 思わず息をのんでしまう程に綺麗な男の子だと思った。 それだけで留めてくれたらよかったのに。 初対面でいきなり泣かされることになろうとは、夢にも思っていなかった。 本当に、今起こった状況が理解できない。 「もう……やだぁ……っ」 桜 稚尋。 本当に、変な男に目をつけられてしまった。 今日は本当に運が悪い一日だ。 それなのに。 彼に触れられた部分がやけに熱く感じた……。 ★泣き虫お姫様 【END】
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