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なれた足つきでエレベーターに乗って15階へ。
下りてすぐの左右に伸びる渡り廊下を右へ進み、ある一室の扉の前へと歩いて行く。
その扉のドアノブを引けば、鍵がかかっていないことに気付き、“彼”がすでに帰ってきているのだとわかった。
ガチャリと、静かにドアを開けて。
「……ただいま」
小さな声で、ため息を漏らしそうな声で、そう言うと
「…おかえり、あき」
と、声がかえってきて。
ピタリと、私の動作が止まる。
なんで、今……このタイミング?
たしかにいることはわかっていたし、「ただいま」と、言ったことに、「おかえり」が返ってくるのは当然のことだけど。
どうしても、彼から「おかえり」と言われると、身構えてしまう。
「あき…?」
ピクリと、肩が揺れた。
こういう声をまわりの子達は、甘い声だの天使のささやきだとか言うんだろうけど…
私には悪魔か死神のささやきにしか聞こえない。
「どうかした…?」
少しずつ近づいてきた影がそっと私の頭をなでて。
私の髪を掬って弄ぶ。
「……別に、どうもしてないケド…。」
手をはらいながらそう言えば、
「そっか、ならよかった。」
その影は妖艶にフフッと笑った。
………余裕だらけ、悔しい。
──そう、誰にも言えない私の秘密…
それは──
学園のプリンスこと、高波先輩と同居しているってこと───……
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