1:私×ヒミツ

5/5
前へ
/48ページ
次へ
───────────── 「──…冬馬、オムライスできたけど」 ダイニングテーブルに、サラダとスープ。 それから出来立てのオムライスを並べて。 ソファーでくつろいでいる冬馬にそう声をかければ、 「──ん…、わかったー……」 まのびたやる気のないような返事がかえってきた。 本当に大好物なのかな? 大好物なら、もっと食いつくと思ったんだけど。 そうじゃないのかな?と首を傾げた後、ふとあることを思い付いて。 「───ねえ、冬馬」 冬馬の背後に回り、背をもたれかけているソファの背に手をついて。 「オムライス、いる……?」 今度は私が、いたずらっ子のように。冬馬を見下ろしながら、そう言った。 瞬間、勢いよく冬馬がソファーから立ち上がって。 その早さに、目を瞬かせる。 冬馬の耳が赤い。 いや、顔も赤い。 「……っ食べよっか、オムライス」 冬馬が席につく。 さっきとはうってかわって、嬉しそうに、頬を赤らめながら。 子供みたい…… 率直に私はそう思った。 「ふふっ、そうだね。食べよっか」 そういって、私は向かいの席についた。 「「いただきま―す」」 二人で手を合わせてオムライスに手をつける。 「──…うまっ」 向かいの席でオムライスを食べている冬馬が言葉をもらす。 思わず、自分の手を止めて彼を見つめてしまい。 「やっぱ、あきは料理上手だな。すごいおいしいよ」 「──っ、そう…よかった」 不意に呟かれた誉め言葉に、どきりと胸が反応して。 パッと顔をそらしてオムライスを口いっぱいにほうばった。 褒められなれていないから、恥ずかしい。 うつむいたまま、冬馬の顔が見えない。 ───私は、自分が、ときどき嫌になる。 嫌いな奴に自分の料理を“おいしい”って言われて、うれしいって思った 素直に「ありがとう」って言えばいいのに。 ─────素直になれない そんな自分が嫌になる………
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

782人が本棚に入れています
本棚に追加