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「……ちげぇよ」
「うそつけ、本当はかわいい子いたんだろ?」
そう言ってニヤついたまま、俺の肩に手をまわしてくる。
「だから、ちがうって言っただろ」
しつこい。
肩におかれた手を振り払うと、鉄棒にかけていたブレザーを取り校門へと向かった。
「なに、帰んの?これからカラオケ行くんだけど、行かねぇの?」
片手をメガホンのようにしながら、俺にそう聞いてくる親友。
「あぁ、ちょっとな…わりぃなまた今度誘って」
少し苦笑いをして。片手をあげると、校門を駆け足で出た。
──────────────
バタンッ……
急いで帰って、息を切らしながら家の中を見渡す。
「……まだ、帰ってきてないか」
鍵がかかっていた辺り、そうだろうとは思ったけど。
しん、っと静まり返る家に、はあっと息をはいて。
あきはまだ帰ってきてないことに心の中で安堵して息を整える。
「……っ何してるんだろ、俺」
ずるりと壁に背をあずけてすわりこむ。
─別に先に家に帰ってなきゃダメなわけでもないのに。
どうして…
この家に住んでいるのは、俺とあきだけ。
以前までは俺の二個上の兄貴も一緒に住んでいたけど、大学進学と同時に独り暮らしを始めた。
あきは後輩、だけど幼なじみだ。
俺が気をきかせる必要はない。
はず、なのに………
「──っ、俺…どうしたんだよ…」
いつも、気づくとあきのことが頭に浮かんで、頭から離れない。
ずっと、考えてて、姿を見かければずっと見ていたくなる。
校庭にいたときも、校舎の中にあきがいるのが見えただけでそこから目が離れないでいたのがなによりだ。
自分でも気づいてる
自分の気持ちに。
本当は表に出して伝えたい。
俺は───……
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