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「まずは落ち着いて。はい深呼吸深呼吸」
言われる侭に目を閉じてから息を思い切り吸い同時に気付く。
良い匂いがする、陳腐な表現をしようとする自身を制動させる程の素晴らしい香りが。
瞼を開き、俺は再び視線を自分の前にいる相手へと正確に向けた。遅いだろって言われても、一言目のインパクトが余りにもデカ過ぎて持つべき余裕なんてものが一欠片も無かったんだ。
「あら、なぁに?」
小首を傾げながらこちらを見る視線と視線が交錯する。
網膜に焼き付いたのは優しい光を灯した碧眼、すっとした鼻筋、薄いながらも女性らしさを存分に見せつける艶やかな唇。
美人って言葉じゃ足りないな。我ながらボキャブラリーが貧弱貧弱ゥ!
自然と苦笑いが生まれ、そんな相手の視線を一身に受けてる現状が酷くもどかしい。思わず視線を逸らしてしまった。初心とかヘタレとか言うなよ。
「取り敢えずは落ち着いた」
「ん、よしよし」
正直理解は追いついてないが、騒ぐのも憚られる雰囲気を彼女から感じたのでそう口にする。
そんなこちらの言葉に満足そうな笑みを浮かべながら頷く度に、彼女の色素の薄い金髪が踊る。櫛を通したら絶対滑り落ちていくだろうなと素人目の俺でも確信を持てる程に、それは綺麗に舞っていた。
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