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一先ず座ろうという提案を受け、テーブルの傍に出されていた
椅子に腰掛ける。形や材質からして特別違う何かがある訳では
なかった。
ふと視線を感じ前へと目を動かせばこちらを向いている碧眼。
座るまでの動作が何か可笑しかっただろうか。俺としては普段
通りを心掛けてたんだが。
「飲まないの?」
「あ、あぁ」
どうやら紅茶の感想を知りたいらしい。言われる侭にカップを手に取り口元へ寄せる。軽く息を吸えばそれだけで柔らかな香りが体全体に染み渡った。
ずっと見られていて少し居心地が悪いが、軽く頭を振って跳ね
除け口を付ける。美味い。
こういう時に何て言えば良いのか分からないのがもどかしい。
「口に合わなかった…?」
沈んだ声が鼓膜を震わせ思わず焦る。どうやら語彙を探している間無意識に眉根を寄せていたらしく、それが彼女には紅茶が合わなかった所為と映ったらしい。
「いや、そんな事はないよ。こんな美味いのは初めてだ」
急繕いな上に稚拙な言葉ではあったが事実なため直ぐ様口に出す。
もう何回口って言ってんだ?
「そっか、良かった」
言葉を聞いた途端沈んでいた表情は反転、ニコニコしながら自分の側にある紅茶を飲み、味に満足したのかしきりに頷いている。
それに一安心しながら俺も紅茶を飲む事にした。
余談ではあるがその笑顔を正面から捉えた時、綺麗と可愛いは
両立出来るんだなと呑気な事を考えていたりしたが結局は余談である。
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