1.プロローグ

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「どっちが早く着くか競争しようぜ」 ただ山を上り下りするだけではつまらない。そんな安易な理由で発言された言葉だった。  ここでその案に乗ってしまった僕も僕だ。僕も男子の端くれであるため、多少なりとも負けず嫌いな面を持ち合わせている。だが、僕には友人に勝るような運動能力はない。  その結果、ショートカットをしようと考えるのは言うまでもない。  普段、地元でありさらには地図があるにも関わらず迷ってしまう僕が近道をするとどうなるか。答えは明確であった。そしてそれを身をもって味わった。 「バカだったよなぁ……冷たっ!」 近くにあった手頃な石に腰掛けたはいいが、あまりの冷たさに飛び上がる。その拍子にポケットに入っていたケータイが落ちる。 ズボンが濡れていないかを手探りで確認した後、地面に転がるケータイを見つめると自然とため息がもれる。 淡い希望を抱きながら折りたたみ式のケータイ、いわゆるガラケーを拾い上げ開く。
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