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「中山のバカ野郎ぉー! 鳴宮のくそったれぇー!」
しばらくして同じセリフばかり叫ぶのに飽きて、山とは関係のないことを叫ぶようになった。ちなみに、中山は山登りに誘ってきた友人、鳴宮は学校の教師である。
そんなことをしていたところ、草をかき分ける大きな音が耳に入った。
その音の大きさから野鳥ではないと判断した僕は叫ぶのを止めた。耳を澄ませ、音の方向に目を向ける。暗闇になれたおかげで多少は視界がきくようになったといっても、それだけではなんとなく安心できないため、構える。気持ち分だけ。
音が段々と近づいてくる。寒いはずなのに首筋を汗が流れる。右手には電池切れのケータイ、左手は握り拳。もしものときこんなんでは役に立たない。ん? もしものときってどんなときだ?
その疑問が頭をよぎったときだった。僕の目の前の草がかき分けられ大きな人型の影が姿を現した。
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