はつ恋

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だらだらとしている間に一時間が過ぎ、 三時間目の教室に向かっている時、大きな手が俺の肩をぽんと叩きニコリと笑った。 「てめえはニコポン野郎(歴史上の人物)にでもなったつもりか。」 「頭の回転が宣しいね、カオちゃんは。 カオちゃん、黒板どころか俺の目さえ見てなかったけど、何をどうノートとってたのかな。 少しだけノートを見せてもらおうか。」 「お前に心配されなくても問題ない。 なにせ俺はテストで一点も落としたことがないんだからな。」 「ああ、そうだったよね。 いつも赤で円を書くのが大変だよ。」 香椎は皮肉そうに微笑んだ。 まるでそれ以外の質問を隠しているかのようにして。 「本当は何を聞きに来た?」 「うん。相変わらずあざとい。 勿論、ユキちゃんとカオちゃんのことかな。」 誤魔化すのはやめてくれ。 これ以上、傷を抉らないでくれ。 「…お前に俺らの何がわかるってんだよ。」 「分かるって言うより、分かってあげたい…かな?」 「…知りたければ、放課後、カンファレンスルームに来てくれ。」 すると香椎は腕組みをして餌を待ちきれない犬のような目つきをして、淡々と話した。 「何か、深い理由があるんだね。 いいよ。話せる限りのことを教えて。」 「…お前は"犬"みたいだ。」 「うん。そうかもしれない。」 正直、この時点で香椎は全てを知っているようにも思えた。 凄く怖い。 俺の存在が香椎の掌上にあると思うと。 ただそれだけで酷く怯えるばかりだった。
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