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思わず声が漏れ。
「高村先生は異世界に戻りたいの?」
宗方君が少し悲しそうに聞いてきます。
「そうですね。……でも、あの世界に戻りたいとは思いません。良くはして頂きましたが、敬われるばかりで居場所は有りませんでしたからね。それにもう私には用は無いでしょうし。ただ、此方での生活は窮屈で。ですから、あなた方の居る世界なら……楽しそうかな、と」
そう吐き出せば。
「やっぱり此方での生活は苦痛になるか……」
滝沢先生が苦笑い。
魔法を使い、命のやり取りをしてきて、戻されて。
虚無感に襲われて。
周りの人間には変わってしまったと嫌厭され。
家族とも疎遠になって。
私も滝沢先生も、似たような境遇でした。
ただ私は元々家族や周りの人達とは疎遠で、寧ろ帰されてからの方が人との関わりが増えたんですけど。
両親以外は。
両親は相変わらず積極的には関わって来ませんでした。
最近は父親が縁談を持ち掛けて来ますが、政略結婚なのは見え見えなのでお断りしています。
一度、勝手にお見合いの席を設けられ、行かなかった事が有りました。恩を仇で返すのか、と色々罵倒されたので、でしたら私は高校1年の夏に死んだと思って下さい、と返したら黙り込んで、無理に勧めようとはしなくなりました。
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