もう1人の元勇者?

13/16
前へ
/256ページ
次へ
思わず声が漏れ。 「高村先生は異世界に戻りたいの?」 宗方君が少し悲しそうに聞いてきます。 「そうですね。……でも、あの世界に戻りたいとは思いません。良くはして頂きましたが、敬われるばかりで居場所は有りませんでしたからね。それにもう私には用は無いでしょうし。ただ、此方での生活は窮屈で。ですから、あなた方の居る世界なら……楽しそうかな、と」 そう吐き出せば。 「やっぱり此方での生活は苦痛になるか……」 滝沢先生が苦笑い。 魔法を使い、命のやり取りをしてきて、戻されて。 虚無感に襲われて。 周りの人間には変わってしまったと嫌厭され。 家族とも疎遠になって。 私も滝沢先生も、似たような境遇でした。 ただ私は元々家族や周りの人達とは疎遠で、寧ろ帰されてからの方が人との関わりが増えたんですけど。 両親以外は。 両親は相変わらず積極的には関わって来ませんでした。 最近は父親が縁談を持ち掛けて来ますが、政略結婚なのは見え見えなのでお断りしています。 一度、勝手にお見合いの席を設けられ、行かなかった事が有りました。恩を仇で返すのか、と色々罵倒されたので、でしたら私は高校1年の夏に死んだと思って下さい、と返したら黙り込んで、無理に勧めようとはしなくなりました。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2100人が本棚に入れています
本棚に追加