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「今は、その、ジュンさんだけ。ですからっ」
思いきって言ってしまった後にやっぱり顔が赤くなるのを感じて俯く。
「モモ、そういうかわいい事は家の中で言うように教えませんでしたか?」
「え?」
顔をあげて主任を見れば微笑んでるんだけど、ちょっと困ったみたいな顔。
そして急に繋いでいた手を離されて、シートベルトをするとギアに手を乗せた主任。
「早く帰りましょう」
「え?」
「朔也の所によってご飯を食べてからと思いましたけど、そんなのはあとでいいですね」
「え、と?」
「充電が先」
充電って言葉を言われて脳みそが沸騰しそう。
途端にかぁーっと熱くなる顔。
昨日の夜遅くにこちらに戻ってきた主任。
お迎えに行くって言ったら何時かわからないからと断られた。
先週も会ってるけど、それでもまたすぐに会いたいって思うのは当然の事なのに。
主任は今日、お昼前にうちに迎えに来てくれたんだけど、部屋にも入らないまま近くのコーヒーショップでランチをした。
それでそのままうちの実家に向かったんだけど……
「着きましたよ」
そして着いたのは朔也さんのレストランでもうちでもない主任の家。
当たり前のように駐車場に入れて私の手を繋いでそのままエレベーターで部屋に向かう。
部屋の前まで来ると、
「モモ、開けて?」
「え?鍵忘れちゃったんですか?」
「あるけど?」
じゃあ、なんで?て聞こうとしたら
「せっかくモモに鍵渡してあるのに使ってくれないから」
「へ?」
「……もしかしたら、部屋で待っててくれるかなぁなんて淡い期待をね、」
「ええええ?!だってっそんなことっ一言もっ」
なにそれっ
迎えに来なくていいっていうのはそういう意味だったの?
昨日の夜にすごい会いたかったのに
「ま、でもそのほうがちょうどよかったのかも?」
「へ?」
「ニヤリ…ほら、また寝れないからね」
……昨日来なくて正解だったみたいです。
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