ご挨拶は初めが肝心です?

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隣で姿勢を正して静かにコーヒーを飲んでいた主任がカップを置いてから口を開く。 「コーヒーを飲んだら、買い物に行きましょう」 「食器とかモモが必要なものを」 えと、これってもうここに住むっていうのが決定事項な感じの話よね? 「あーでもあの。」 「ここにいてくれたら安心できます。セキュリティの問題だけではなくですよ?」 セキュティだけじゃなくってことは。 やっぱり私のやることは、まだまだ目が離せないっていうことなんだよね。 そう思うと悲しくなってきて、頷くのが精いっぱいで。 「……。」 「恋人の心配をするのは当然でしょう?」 恋人って言われてちょっとだけ嬉しくなってちゃんと迷惑じゃないか聞いてみなきゃ。 「でも、あの…」 「迷惑なんて全く思ってないですからね。むしろここにいてくれないほうが迷惑です」 「え、」 また私が聞こうとする前にその答えを先に言ってくれる主任。 何度こうして主任の行為に甘えてきたことか。 「甘えてくれていいんですよ?むしろモモは甘やかし倒したいぐらいですからね」 「なっ、なんですか、その甘やかし倒すってっ」 「その言葉の通りですが?」 なんていうか、主任って。 「もうっ、」 「今はここで、モモに待っていて欲しいんです」 急に真面目な顔で主任がいうから、私も背筋がピンと伸びた。 主任のメガネの奥の瞳がちょっと寂しそうに見えた。 そしていつものように私に、 「モモ、返事は?」 「はいっ」 そう呼びかけれれば、イイ子のお返事をしてしまう。 「決まり。ですね」 あ、また主任にやられた。 だってさっき寂しそうに見えたはずの瞳が、ニッコリと微笑んでる。 ニッコリ?いや、ニヤリの方が正しいのかもしれない。
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