582人が本棚に入れています
本棚に追加
それから―――
前にも一緒に行ったことのあるショッピングモールへ。
何から何までそろえようとする主任を必死で止めて今日の目的のマグとトレイを購入。
主任の金銭感覚ってなんかちょっとおかしい気がするんですけど……
「次に帰ってきたときは、おかえりなさいと言ってくれると嬉しいんですが」
「いや、そんなすぐには、無理って言うか」
そう言えば、悲しそうに(きっと振りを)している主任。
いえ、絶対に今度は引っかかりませんっ。
「それにお盆休みには自宅の方に帰りますよね?」
「え、あぁ、まぁそうですね。お墓参りとかもありますし」
今まではそうしてたけど、でもそうすると主任と会えないんだ。
あ、でも。その前に主任、お休みはどうするんだろ?
「お盆休みはモモとゆっくり…というわけにはいかないみたいですね」
「えーと、あーでも。」
「無理しなくてもいいですよ」
いや、無理じゃなくて。一緒に居たいんですけど。
でもこればっかりは一人では決められない。
だいたい、引越しの件もきちんと決めなければいけないし。
「引越しの件は母ともよく相談して改めてお返事します」
「いい返事期待してますよ?」
そんなこと言って、いい返事意外受け付けないくせに。
さすがにここまでくるとブラック主任の事も少しずつわかってきた。
自分の思う通りに遂行するために用意周到に手をまわすってことも。
私に何も相談なしにするけれど、それでも私の事を考えてしてくれるのはわかる。
「買い物も終わりましたし、朔也の所に行きますか?」
「はいっ」
今月の限定メニュー楽しみなんだよねー。
朔也さんには先週料理教室でも会ったけど、まだこれは主任には内緒にしてるし。
久しぶりって顔しておかないとだよね。
「ずいぶんとご機嫌ですね」
「はいっ、それはもう」
「ほんと、妬けますね」
「へ?」
「そんな顔をさせる朔也に」
「え?だって朔也さんじゃなくてっ、朔也さんの料理ですよ?」
「それでも、です」
よくわからない。
朔也さんに会いたくて喜んでるわけじゃないのに。
主任のこの嫉妬ゲージはすぐにそんなことで溜まってしまうみたいで。
いや、そんなゲージたまってもちっとも嬉しくないのだけれど。
朔也さんが料理教室の件は内緒って言ってた事の意味が今わかった気がした。
最初のコメントを投稿しよう!