ご挨拶は初めが肝心です?

3/19
583人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
遡ること数週間前――― 私は主任の東京の自宅を訪れていた。 付き合うってことになってからは二度目のデート。 デートっていうか、おうちに押し掛けちゃってるんだけど…… ともかく、その時に突然、次に帰ったらご挨拶行くからなんてことをさらっと言った主任。 私だってもう25だし、付き合うぐらいでわざわざ親に報告とか許可とるとかそんなことはしなくてもいいと思ってた。 「こういうことはきちんとしておいた方がいいんです」 「でも……なんか色々言われそうですし、」 だって前に言っていた会社の上司が彼だなんて紹介したらお母さんとかすごい一人で大騒ぎしそうだし。 しかもそんな騒いだ後で別れたりしたら、それはそれでまた説明するのも…… 「言われたら困ることでもあるんですか?」 「へ?いえ、あのっ」 「まさか、別れた時の事なんて、考えたりしてないですよね?」 そう言ってこちらの顔色を伺っている様子の主任。 う、また主任。 私の顔を見て考え読んだに違いない。 恐る恐る顔を上げると主任は口元は笑ってるのに目が笑ってないっ うわーん、誰か助けてっ といっても、ここには誰もいるわけがない。 「そんなことっ考えてないです…ケド」 「当たり前です。別れるつもりなんて、さらさらありませんから」 さらさらって言った? それは嬉しいけど。でも、なんていうか…… 「それなら問題ないですね。次の休暇に伺いますのでご両親に連絡して置いてください」 そしてあっさりとその話を終わらせた主任。 もちろん、これは決定事項って言う意味。 ―――――――ハァー そのときの事を思い出し、おもいっきりため息を付いた私。 「それで?桃華ちゃん。堂地さんなのよね?前に言ってた会社の…――」 「あああああああ、いや、あのその話は……」 「?」 「桃華ちゃんにね、会社にいい人いないの?って聞いたらキリッとパリッとして素敵な人がいるって言っていたから」 ああああああ。最悪。 お母さんたら、それっ、今本人の前で言っちゃう? 「おや、そうなんですか。それは光栄です」 なんて主任は言って営業スマイルを崩さない。 あぁもう、だから家に連れてきたくなかったのに。
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!