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「り、凛ちゃんっ!」
翌朝。
教室に入ると、陽菜が慌てて駆け寄って来た。
「あら陽菜、おはよう」
「おはよう……って、そうじゃなくてっ!」
「はいはい、昨日の件でしょう? 慌てなくても話すわよ。だから少し待って」
待て、のポーズをすると、途端に陽菜は大人しくなる。
瞳をキラキラさせて、私を見つめたままで。
早く話したくてうずうずしていることは、欠片も隠せてはいないけれど。
それでも私に言われた通り、じっと手を握りしめて待っている陽菜。
本当に、相変わらず素直で、可愛らしい。
思わず笑ってしまいそうになるのを堪えて、席に着く。
そして鞄から教科書やノートを取り出し、授業の準備を始めた。
隣でそわそわしている陽菜を、あえて見ないフリをして。
……わざと動作を丁寧に、ゆっくり進める私は、やっぱり意地悪なのかもしれない。
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