触覚のキオク

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ほどなくして聞こえてきたのは彼女の声。 声というか、くぐもった音。 英語と日本語と、 何やらよくわからない言葉が時折混ざる会話が漏れ聞こえてくる。 『大きな声を出さないで彼女に聞こえる』 そのぐらいの英語は私だってヒアリングできる。 気を使ったであろう彼の声が余計私の意識を目覚めさせてしまっていた。 まさか私がこんなにも近くにいて 声だって もしかしたらその姿だって 見えるかもしれないこの状況で 彼女が体を許すなんて事…… 彼の家についてきたときからこうなるかもしれないという事は、頭のどこかでわかっていたはず。 彼女は黒人好きで、私が見てもセクシーだと思わせる彼の容姿に彼女が手を出さないはずはなかった。 黒人が好きな理由に“肌が”と言っていたのだから…… 眠れるはずもなく、じっと身じろぎさえ出来なかった。 そして――― カタン 静かになって、階段を上ってきたのは……
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