触覚のキオク

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「ねぇ、あの時、」 「…?」 「ほら、黒人の彼に二人でお持ち帰りされちゃった時」 「あぁ、懐かしいね。そんな事もあったよね~」 彼女にとってはただの想い出で。 私にとっては…… 「あの時、私も本当は肌を堪能したかった」 「へ?」 「あの時、下でシたんでしょ?声、聞こえてたし」 「あぁ、やっぱり……何にも言わないから寝てるかなぁなんてね?」 寝てたとしても起きるわよ、あの声のおかげで。 「あの時、肌が合うって言ったその意味を知りたいって思ったの」 「てことは、彼とは何もなかった?」 少しは気にしてたんだ。 さすがにあの雰囲気で何もないでは済ませられない。 と言っても手を繋がれていただけだったけど。 でも、そんな事教えてあげない。 「もちろんよ、友人と彼を共有するなんて事私には出来ない」 「その言い方、らしいけどね?」 らしい。 あの時は確かにそう思っていたけど、 「でも今なら堪能してたかもと思う」 「ふぅーん」 負け惜しみ、か。
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