触覚のキオク

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駅前にそびえたつマンション。 一度だけ来たことのある彼の部屋。 普段は外で会う事が多かった。 プライベートにあまり踏み込まないように…… そんな私が自ら彼の住む家へ行くと言った時の彼の驚きようと言ったら エントランスで着いた事を伝え、エレベーターに乗る。 エレベーターに乗っている間もずっと彼の事を考えていた。 彼以外で寂しさを埋める事なんて出来なかった。 彼以外が触れても心が震えるような事はなかった。 そんな気持ちを伝えたい。 そしてなにより 私が彼に触れたい――― ポーン 彼の住む階に到着し 扉が開いた瞬間に伸ばされた腕。 余裕な表情で会った時はいつも冷静で そんな彼の中で私の存在なんて小さなものだと思ってた。 だけど今は…… 「…全然連絡してくれないから、」 私を腕に閉じ込めたまま言う。 「あの、ここ通路……」 「随分と余裕なんだね?」 いや、そうじゃなくて誰が見てるかわからないって言う意味。 だってご近所の方にこんな姿見られたくはないでしょう? 「そんな所も気にいっていたんだけどな、」 そう言ってから彼は私を腕から解放すると、すっと腰に手を置きエスコートする。
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