聴覚のキオク

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いつものように彼女と待ち合わせをしてビアバーに向かう。 別に彼カノでもないから手なんて繋がない。 微妙な距離を持って歩く。 帰りもそのつもりだったのにどこでどう間違ったのか彼女はいつもよりも少し酔っていた。 仲の良い友達が結婚する その事実に彼女の心が少し押しつぶされてしまっていたようだ。 女の人はこういう時、男とは違う微妙な心の変化があるんだろうな。 そう思い見守っていたけど、あまりにもふらふら歩く彼女の手首を捕まえ駅までの道を歩いた。 はじめて触れる彼女。 時折触れる腕と肩。 彼女の息遣いまでもが聞こえてしまいそうな距離。 「危ないからつかまえとく」 そう言ったのは彼女の体だけでなく心も こうして捕まえておけたらいいのに――― いつしか彼女は口数も少なく、駅までの道をそうされたまま一緒に歩いてくれた。
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