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到着ロビー
待っていた彼女を抱きしめて
耳元で「タダイマ」と囁いた。
その前から泣いていたのに
さらに泣かせてしまった。
聴かせてよ、その声を
そしてオレだけのために言って
「…おかえり、なさい…」
やっとのことでそう言ってくれた彼女をもう一度抱きしめた。
本当の意味で帰ってきた。
そう思った瞬間だった。
やっぱりオレはこの声に癒されている。
そしてその声を一番近くで感じていたい。
彼女の耳元でもう一度囁く。
「今日は一晩中、その声。聴かせて」
一瞬で真っ赤になった彼女。
いや、だって当然デショ?
オレ、待ってたんだからこの日を。
「おーい、イチャイチャすんの帰ってからにして。ほら送ってくから」
「サンキュ」
オレは友人にそう答えると彼女の手を取り歩き始めた。
初めて会った時に心地イイ声だと思った。
次に会った時にずっと聞いていたいと思った。
甘く、心に入り込んでくる彼女の声。
「オレだけに聴かせて」
END
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