視覚のキオク

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トントン――― 「失礼します」 パーテーションで仕切られているだけとはいえ、一応ノックするのは会社の規定。 いつものように私は新規のお客様と営業のいるそのブースにお茶を運んだ。 テーブルの上に並ぶ沢山の資料。 下手な場所にお茶を置いてはそれを汚してしまうかもしれない。 少し躊躇していると営業が場所を作ってくれた。 ほっとしてお客様と営業の分のお茶をテーブルに置く。 「ありがとう」 すみません、ではなくありがとうと言ってくれたその言葉と お茶を準備して欲しいと言われて、勝手に想像していたのがおじさんだったのに思いのほか声が若かったのでうっかり私はその声の先を見てしまった。 別に取引先の方を見るなんて事は普通に良くある事。 だけど、私は思いっきりその方の顔を凝視してしまっていた。 正しくは、目が離せなかった。 だって「ありがとう」と言ってくれた彼の顔があまりにも……… まるで少女漫画で王子様的なキャラが出てきたときのようにバックに花背負ってた。 いや、花って言うかなんだろう、あれ。 色がピンクだった。 ばら色? いや、アレ……なに?
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