視覚のキオク

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「あういうの好みだったんだ」 もう一度確かめるようにいう彼の瞳は少し揺れていた。 「あういうのっていうか…ね、」 自分でも言葉に出来ずにいた存在が目の前に現れたなんて言ったらこの同僚に笑い飛ばされるだろう。 「まぁちょっと育ちよさそうっていうだけで、別に普通だろ?」 彼の言う言葉に反論の余地はない。 本当にその通りだから。 けれどただそれだけではない何かか私の中に燻ってる。 「まぁ、…そうだけどね」 「なんだよ、その言い方。」 拗ねるように言う彼の少し突き出したその唇を突きたいと考えつつも答える。 「私だってわからないわよ、それだけじゃないって思ってしまった理由が」 そう言った瞬間彼の瞳が曇った気がした。 そんな風に思うだなんて私は随分と自意識過剰なのかもしれない。 けれど 「へー、それだけじゃないだなんて随分とご執心だな」 嫌味を含んだ彼の言葉なんて知らんふりで頭の中で考える。 その理由を。 なんで彼を見た瞬間時間が止まったように感じてしまったのか。
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