視覚のキオク

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その瞬間の男の人の顔が好きだ。 この上なく自分を愛しいものととらえ、全力を注いでくれる。 これが本当に愛している人だったらもっと違う気持ちにもなるんだろうか。 ゴロン――― 私の横になる彼。 さっきまで普通に一緒に飲んでいたはずだった。 いつの間にか欲を隠さずに私に触れてきた彼に、拒否する理由も見つからずに今に至る。 彼女がいる人とこういうのは個人的にはするべきことではないと思う。 けれど、彼の明け広げな欲と飲んだせいか私の少しの欲がこの瞬間を生んでしまった。 まぁただ私も人恋しかったのかもしれない。 「なぁ…」 「ん?」 「……いや、なんでもない」 彼の言わんとしている言葉はわからなくもない。 けれど、彼との関係を今以上に変えるわけにもいかなくて気にしていない風を装う。 そんな彼との関係が変わったのはあの日。
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