嗅覚のキオク

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「大丈夫ですか?お疲れなんじゃないですか?」 まさかあなたのその香りのルーツを掘り下げてましたとはいえず。 ましてや、もっとその香りを深く吸い込んでみたいなんて変態発言はもってのほか。 下を向いて小さくため息をつくと、慌てて笑顔を作り答える。 「いえ、そう言うわけじゃ……」 「いつも人一倍頑張っていたから、脱力感も他の人よりも強いんじゃないんですか?」 「そんなことないですよ、私なんてまだまだです。全く余裕なんてなくてお恥ずかしい限りです」 彼を見ていると、仕事はもちろんきちんとしていて、なおかつ楽しんでいるようにも見える。 そんな風に自分もなりたいと思った。 仕事人としての憧れのようなものもあったんだろう。 「なんか変な感じですね。知り合ってからだいぶ経つのにこうして一緒に飲むのが最初で最後だなんて……」 私はそう言ってから手元のグラスをぐっと飲んだ。 そう、きっと彼とは最初で最後。
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