視覚のキオク

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「それじゃあ、僕は彼女を口説いても?」 彼がそう言った瞬間、私も同僚も時を止めた。 気がした。 ともかく私に限っては、好みだと思う彼が言った一言に驚きを隠せない。 「また、そんな事言ってみんなにそんな事言っちゃダメですよ?若い子は本気にしちゃいますからね?」 そんな風に言って私は彼をけん制する。 「心外だなぁ。少なくとも貴方に関しては本気ですけどね」 そう言った彼の真剣なまなざし。 それをどう受け止めていいのか…… 「なんだ、二人はお互いに興味あるんだったんだ?そんな事なら俺、今日帰りますよ?」 「え、何言って…―」 「仕事抜きで、彼女口説いても?」 彼がもう一度聞いた瞬間、同僚の彼は立ち上がっていた。 「じゃ、ごゆっくり…」 そう言った同僚の後姿にかける言葉もない。 「さて、」 さて? 「邪魔物は居なくなったし、」 ジャマモノ? 居なくなる? 誰が?
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