視覚のキオク

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店を出てさっきよりも近い距離の彼に戸惑った。 本気で口説くと言った彼――― 好みだと初めて思った彼に口説かれるのはかなり…… 「それで?どうする?」 ドウスル? 何を? ホテルのバーに行こうという彼。 そこに行くという事は、そのあとの時間もついてくるという事。 その選択を今、彼は私に委ねている。 彼との時間は魅力的だ。 自分が好みだと思う男性に生きてるうちに何度出会えるのか。 見た目の魅力と本能の欲するその力に引き寄せられるように頷いていた。 「じゃ、乾杯」 カチリとグラスを合わせた時 これから彼と重なる時間に期待からか心までもが重なった気がした。 彼との会話 彼の纏う空気。 彼の発する言葉。 すべてがこれからに時間を期待させる。 心も体も酔いが回った時、そっと彼が囁いた。 「もっと本気で口説いてもいい?」 耳元でささやかれたその言葉だけでもすでに酔いが回るには十分だった、 もうすでに酔っていた、彼の言葉にも。
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