視覚のキオク

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「別に何ともない。そんなの答えになってないだろ?」 「そう?その言葉の通り、だけど?」 彼が苛立っているのはわかる。 けれど、その苛立ちを私に向けるのは間違っている。 だってあなたには彼女がいて…… 「なんだよ、それ。おまえっていつもそう。」 いつも? イツモっていつのこと? 「いつだっておまえは俺の手からすり抜けていく。俺が本気になんてならないように上手に予防線張りながら」 予防線? そんなの張った覚えない。 大体、彼女がいる人に手を出すつもりなんて…… 「彼女がいるなんて言っても全く動じないし、好みっぽい男と飲みに行かせても変わりがない。おまえはどんな時に本気になるんだ?」 好みの男と飲みに行かせた? それってわざと? 「本気になっていい相手なら、本気になるよ。たぶん」 うっかり本音を口走ってた。 だって本気になっていい相手なんて… そう言ってから俯いた私の耳に届いたのは戸惑ったような同僚の声。 「おまえが?本気になんの?」
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