視覚のキオク

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「あはは、ごめんごめん」 なんとなく謝った私に、ますますふてくされる同僚。 「ごめんなんて言葉欲しくねーよ」 そう、だよね。 だってね。 今のあなたすごくかわいい。 最初からそんな姿見せてくれたら…… いや、きっとあの頃の私は気付かなかった。 好みだと想えるあの人に会ったからこそわかる。 今だからこそ。 「ふふ、ごめんね。気付かなくて」 「全くだよ……おまえ、まじで男らし過ぎて…―」 「でも。そんな所が良かったんでしょう?」 絶句している同僚。 だってこれが私だから。 彼の間近まで顔を寄せて、目を見つめて言う。 「私に気付いてくれてありがとう」 ありがとう。 私の気持ちを気付かせてくれて。 本当は気付かせてくれたのは同僚ではなく、彼なんだけど。 でもそのきっかけを作ってくれたのは同僚。 キョトンとしている彼にさらに距離を縮めて口付けた。
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